研究紹介

研究テーマ反強磁性体の超高速磁化ダイナミクス反強磁性体の逆ファラデー効果、逆コットン・ムートン効果


反強磁性体の逆ファラデー効果、逆コットン・ムートン効果

反強磁性体は一般にスピン歳差運動の周波数が数テラヘルツに達し、超高速スピ ン操作の可能性を秘めている。本研究では、反強磁性体に円偏光フェムト秒光パ ルスを照射することで、外部磁場や外部電場を必要としない高効率でテラヘルツ クラスの相制御・光スイッチングを目的とする。 反強磁性体NiOにおいて円偏光パルス照射による非熱的なスピン制御を目指し、磁気光学ポンプ-プローブ測定を行った。NiOの反強磁性共鳴周波数と一致する1.1 THzと約140 GHz の振動が観測された。この結果は逆ファラデー効果、つまり円偏光パルスが試料内に有効磁場を作り出し、スピン歳差運動を誘起したとして解釈された[1,2]。 さらに反強磁性体CoO, DyFeO3を用いてスピン歳差運動の励起とその発生機構についての研究を行った。DyFeO3 については励起光の波長・偏光とスピンダイナミクスの関係について詳細を理論的に解析した[3]。またCoO では4THzと9THz の極めて高速なスピン歳差 運動の励起に成功した。


図:円偏光パルスで誘起した反強磁性体NiOのスピン歳差運動


  1. T. Satoh, S.-J. Cho, T. Shimura, K. Kuroda, H. Ueda, Y. Ueda, and M. Fiebig
    Photoinduced transient Faraday rotation in NiO
    J. Opt. Soc. Am. B 27, 1421 - 1424 (2010)

  2. T. Satoh, S.-J. Cho, R. Iida, T. Shimura, K. Kuroda, H. Ueda, Y. Ueda, B. A. Ivanov, F. Nori, and M. Fiebig
    Spin Oscillations in Antiferromagnetic NiO Triggered by Circularly Polarized Light
    Phys. Rev. Lett. 105, 077402 (2010)

  3. R. Iida, T. Satoh, T. Shimura, K. Kuroda, B. A. Ivanov, Y. Tokunaga, and Y. Tokura
    Spectral dependence of photoinduced spin precession in DyFeO3
    Phys. Rev. B 84, 064402 (2011).