研究紹介

研究テーマホログラフィックメモリーコリニア方式ホログラフィックメモリー


単純化モデルによる記録機構の数値解析

ホログラフィックメモリーとは、デジタルな2次元パターンをホログラム記録しておき、再生のときに元の2次元パターンの像を再生させることで一度に大量の情報を取得することのできる記録方式である。昔から、大容量のデータ記録と高速な読出しが可能なことから注目され、研究がなされてきた。中でも近年発表されたコリニア方式はCD,DVDの様式を踏襲した直径12cmの光ディスク構造を記録媒体(メディア)として使用し、次々世代の光ディスク規格の候補の1つとして脚光を浴びている。その容量は1枚で約1 TB(1層式DVD200枚分)達成可能である。本研究室ではコリニア方式の記録再生の原理を追究し、数値シミュレーションをしながら、コリニア方式の性質の見極めやシステムの改善を図っている。メディアの性質の解析にはCoupled-wave Analysis(CWA)Beam Propagation Method(BPM)などの電場計算を用いている。最近我々は、単純な数値モデルを仮定して記録再生の電場回折計算を行った。その結果、実際の記録再生像の性質を上手く再現することができた。この数値モデルからディスクの記録層の厚さと再生像の精細度に関係を見出した。 本研究はコリニア方式の開発元である株式会社オプトウエアとの共同研究である。

 

時系列信号方式コリニアホログラフィックメモリー

システムの概要

コリニアホログラフィーシステムの光学系の概要を図1に示す。一つの光軸を通ってきたレーザー光に、空間光変調器(SLM)を用いて参照光パターンと信号光パターンを付加する。これを対物レンズで絞ることで、参照光と信号光が干渉し、情報をメディアに記録することができる。データ再生時には、SLMの参照光の部分だけを再生照明光として照射すると、記録した信号が再生されてCCDセンサーで読み出される。本研究室ではこれを利用して、ホログラフィックメモリーの更なる大容量化・高速化を図れるシステムとして時系列信号方式コリニアホログラフィックメモリーを考案し,その特性評価を行っている.

従来のホログラフィックメモリーでは、データの読み書きはページ単位の2次元デジタルデータ配列によって行ってきた。これに対して本方式では、ページ内の各画素に注目し、多数の画素を用いて並列的に複数の時系列信号を連続的に記録再生する(図2)。これにより従来の方式に比べて高密度にデータを記録することができるようになり、より大容量かつ高速なホログラフィックメモリーの実現が期待できる。



時系列信号記録再生の数値計算

これまで、本方式のシステムの記録再生シミュレーションを行い、時系列信号を記録した際にどのような再生信号が得られるかについて検証してきた。その結果、トラック間のクロストークが非常に大きくなるという問題が生じた。これは、本方式特有の問題である。この問題を解決するため、従来のホログラフィックメモリーに関する理論をもとに本方式の記録再生に関する理論を構築した。また、この理論が正しいことをシミュレーションにより実証した(図3)。




  1. Tsutomu Shimura, Shotaro Ichimura, Ryushi Fujimura, and Kazuo Kuroda
    Analysis of a collinear holographic storage system: introduction of pixel spread function
    Opt. Lett. 31, 1208 - 1210 (2006)