研究紹介

研究テーマ>超短パルス>中赤外光発生


有機結晶DASTを用いた中・遠赤外超短光パルスの発生

中赤外域の超短光パルスは、特に液相分子の高速振動分光への応用という観点から重要性を増している。通常、中赤外域の超短光パルス発生にはGaSeなどの半導体非線形結晶が利用されるが1)、透過波長域の制限のために18 μm以上の波長域は、発生・検出ともに困難である。近年では、より長波長域での超短パルス光へのニーズが高まっており、20 mmを超えてTHz領域との間の空隙を埋めることができれば、水素結合分子系の分子間振動モードやフォノンダイナミクスなどの物性研究に新たな展開がもたらされると考えらえる。 そこで我々は、テラヘルツ波発生用の非線形有機材料として近年盛んに研究されているDAST (4-dimethylamino-N-methyl-4-stilbazolium tosylate)に注目した。中心波長800 nm, パルス幅150 fsのTi:sapphireレーザーからOPAによりSignal光とIdler光を取り出し、その差周波発生を利用して、パルス強度約200 nJの中・遠赤外超短光パルスを検出した。中心波長1575 nmと1640 nmの差周波発生では、10〜30 mmの広帯域なスペクトルが得られた(下図)。 1) R.A.Kaindl, et.al., J. Opt. Soc. Am. B., 17 (2000) 2086.


図:DASTから発生した中・遠赤外光スペクトル


  1. T. Satoh, Y. Toya, S. Yamamoto, T. Shimura, K. Kuroda, Y. Takahashi, M. Yoshimura, Y. Mori, T. Sasaki, and S. Ashihara
    Generation of mid- to far-infrared ultrashort pulses in 4-dimethylamino-N-methyl-4-stilbazolium tosylate crystal
    J. Opt. Soc. Am. B 27, 2507 (2010)