研究紹介

研究テーマフォトリフラクティブ効果有機材料


高性能有機フォトリフラクティブポリマー材料の研究

1990年代に入り有機結晶および有機ポリマーでのフォトリフラクティブ効果が確認され,有機材料もフォトリフラクティブ材料としての仲間入りを果たした.フォトリフラクティブ効果を示す材料にはいくつかの種類がありそれぞれが個性的な特徴を持っているが,このような中で有機ポリマーは機能設計がしやすく,大きな性能指数を持ち,安価・容易に作製できるという利点を持つ.

フォトリフラクティブ効果のメカニズムは

  1. 光強度分布によってキャリアの励起・拡散が起こり電荷の空間的な分布が形成される
  2. 電荷の空間分布に対応する空間電場により屈折率変化が引き起こされる
というステップに分解でき,ここで,一般的な無機材料においてはメカニズム2.の屈折率変化は電気光学効果が担っている. これに対して,有機材料では非線形光学分子(NLO分子)の配向による屈折率変化の効果が大きく(オリエンテーショナルエンハンスメント),これが無機材料に比べ高い屈折率変化・回折効率の値を得やすい理由である.


図1.フォトリフラクティブポリマーの構成分子

図1 は機能・性能設計の一例である.電荷発生とその輸送,そして屈折率変化のための分子を混ぜることで,1つのサンプルにそれぞれの機能を持たせフォトリフラクティブ効果を発現させている.これらの構成分子を同じ機能を持った別の分子に換えることで,フォトリフラクティブ性能は変化する.


図2.オリエンテーショナルエンハンスメント

図2 はオリエンテーショナルエンハンスメントを説明する模式図である.非線形光学分子が感じる電場ETは光強度分布により引き起こされる空間電場と外部印加電場E0の重ね合わせであり,このETによって非線形光学分子は配向する.非線形光学分子が配向すると,マクロで見て図のように屈折率楕円体の分布ができるためこれが屈折率変化に対応する.

現在,我々は東京大学生産技術研究所第4部荒木研究室と共同で,応答速度が速く回折効率が高く且つ安定性にも優れたポリマーを目指し研究を進めている. アプリケーションによって必要とされる性能が異なるため,各々に応じた優れた材料を設計し使用できるようにすることが最終的な目標となる.

G. B. Jung, K. Honda, T. Mutai, O. Matoba, S. Ashihara, T. Shimura, K. Araki, and K. Kuroda
Structural design of nonlinear optical chromophores for high-performance photorefractive polymers
Jpn. J. Appl. Phys. 42, 2699 - 2704 (2003)